「ラグビーの敗けたる側を見てゐたる」 田中丸木の葉 2008・1
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俳誌『百磴』 (雨宮きぬよ主宰)の句集紹介のページに『木下ひでを第一句集』が紹介されまし
た。
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『木下ひでを第一句集』
この句集の特色をまず紹介したい。一つには収録されている句のほとんどが、著者が代表
の俳句集団「セミの会」のメンバーが選んだ事、もう一つが選者の印や「歳時記」掲載の句に はその印が付いている事である。読者はこの印を参考に句を見る楽しみ方も出来る。ポケット にも入る小型であるが二百十六句が収録されている。句集名に第一とあるので、第二句集へ と続く事を期待したい。
白椿首落さずに朽ちにけり
黒髪の整へてある流し雛
夏座敷ひとりすわれば山があり
夏帽子モガと呼ばれし叔母の逝く
遠くより見ればさびしき夜店かな
わが街は低くありけり鰯雲
みな違ふ音きいてゐる秋の夜
吊し柿村の大気の動かざる
ラグビーの敗けたる側を見てゐたる
たとふれば切れ字のごとし去年今年
昭和十四年生まれ。元『俳句朝日』編集顧問。俳人協会会員 連句協会会員
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ラグビーの敗けたる側を見てゐたる
【解説】 田中丸 木の葉
わたしが参加している「セミの会」には、ラグビーが大好きな方が何名もいる。まず木下代表
がラグビーが大好きなのだ。冬のこの時期はラグビーシーズン真っ只中ということもあり、セミ の会の句会では必ずと言っていいほど、ラグビーを詠んだ句が登場する。わたし自身はラグビ ーは好きだが、自らチケットを求めて出かけるほどのファンではない。時折、チケットを頂くと出 かける程度である。そして大声で応援をし、試合を楽しんでしまう。
ラグビーの敗けたる側を見てゐたる
句集を作るために選句の作業をした時、わたしはこの句を選んではいない。多分、何人もの
人がこの句を選ぶであろうと思ったこともあり、他の気に入りの句を選びたいという気持ちがあ ったのだ。
だが、改めてこの句を読み直していると、冬の日のゲームの終わったラグビー場の風景が、
まざまざと浮かんでくる。勝ったチームの側は笑顔に満ちている。敗者となったチームの 陣・・・・。光と影・・・・。
俳句はその一瞬を詠めと言われた。が、なかなかそれが難しく、ほんのたまに上手くいったと
きには大変うれしいものだ。お腹の中でニタリとしてしまう。
このラグビーの句は、良い句だと思う。もう一度選句をするなら、わたしは迷わずこの句も選
ぶであろう。
今年もヘタな俳句を作り続けて「セミの会」で遊ばせていただこう。
2008年1月吉日
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